HOKPITAL 北海道病院協会 掲載記事 人を幸せにする人が幸せになる』ひとつの社是に込められた決意

家を建てることは、その人の人生を建てること。
豊かな人生観を提示すること。

私にとっての「建築」とは、「なんのために建築するのか」を考えることでもありました。数奇屋でもあり独特の趣があります。

なんのために? 問い続けてどんどん自分を追い込んでいったとき、「建築する場は、その人の人生観を形にすること」というところに辿りつきました。

建染家は、お客様の人生観を建てるのだとすれば、私自身が豊かな人生観を持っていなければならないし、お客様に豊かな人生観というものを伝えていくことが大切だという気がしています。

考えてみてください。自分が家を建てたいと思うときに、自分よりものを知らない、美意識も足りない人間に家なんか頼みませんよね。

家づくりは、人生のうちで最も大きな楽しい遊びをすることであると思います。でも、大半の方はその遊びを放棄して、車でも買うような気持ちでインスタントな住まいを買ってしまう。家は商品だと思っていらっしゃる。私はそういうふうには考えなかった。家はその人の人生観そのものであり、私はそれを提供できる人間になりたいと思いました。

人の思いや関心は進化、成長する。
それを見越した満足感をイメージする力。

家づくりは想像力が必要です。プランニングをしている段階での100%は、実際に住んだときのお客様の100%の満足にはなりません。なぜなら、お客様の心や関心が、住み始めるまでの間に進化し、高まっていくからです。

家づくりのご提案をするときは、現時点でのお客様の100%の満足ではなく、その先にある満足を見通す想像力が必要です。相手が進化、変化していくことを見越して、そのギャップを埋める努力をしなければなりません。

人は、お互いに、相手のことを100%理解する ことはできません。私たちがお客様の想像していることの半分しか理解していないとすれば、お客様にも私たちの言うことの半分しか伝わっていないということです。結局4分の1しか理解できていない。そこを埋めるのが相手を想う心、相手の気持ちやライフスタイルをイメージする想像力だと思います。

感謝しながらお客様に学ぶ。
仕事ができる人の第一条件は 人の気持ちがわかること。

感謝することができない人はたいてい仕事もできないと思っています。お客様が言ってくれたことを感謝して聞くことができれば、ものすごくコミュニケーションが早くとれるでしょう? なにか言われたときに、「指摘された」と思う人と、「ありがとうございました」と言える人とでは、そのあとの展開がまったく違います。

今の社会は仕事ができるとか、できないという評価をするときに、その人の人間的な部分を見ないで、目に見える結果や数字ばかりを追いかけてしまいます。でも数字や結果ばかり考えていては、納得のいく仕事はできません。仕事ができる人の第一条件は、ただ目先の数字をあげることではなくて、人の心がわかることだと思っています。

人から人へ、嬉しい気持ちを手渡していただくことが顧客開発につながる。

私たちの会社では営業費も含めて、広告宜伝費は売り上げの1%しか使いません。宜伝は、人から人へ伝えていただく口コミによる顧客開発、それしかないと思っています。

では、なにを口コミで伝えていただくかというと、お客様の満足感です。この会社に頼んで『よかった』というお客様の嬉しい気持ちが、お客様からお客様へと手渡されて、私たちの仕事につながっていく。心と心をつなぐ、『よかった』という思いの手渡しです。1%の宜伝費も、そのためのツールづくりに使います。

家を建てられたお客様から、「自宅に知人を招いてパーティをしました、食事をしました」という お話をよく聞きます。自分の家に満足しているから、居心地がいいから、ここが愉しいから、だから人を招く。その愉しさが口コミで広がっていくことは、宣伝するよりはるかに大きい効果を生みます。

”ハウスドクター” として、お客様のためにチャレンジする心

世界の先進国のなかでも、日本の住宅の寿命はものすごく短い。アメリカで55年、ヨーロッパでは70年、ところが日本では20年とか25年というのが現状です。

人の一生のなかで、20年しかもたないものを延々と作っている。そこに携わっている私たちは、その現実をもっとちゃんと見なくてはいけない。そんな思いもあって、住宅に問題を抱えている方のご相談をお受けする「ハウスドクター」という仕事を雑誌社から引き受けて10年が経ちます。

驚くことがたくさんありました。建築は「生きるための場」と思っている私たちから見ると、あまりにも実体がひどかった。ときには業者と相談者の間に入って、裁判に立ち会うこともありました。

企業はつくった製品に自信の持てないものを出してはいけません。言うことと行うことは、一体でなければならない。陽明学でいうところの『知行合ー』です。その理念のもとに努力をしなければなりません。

森をまもり、山を育てる。それは人を守ることと同じこと。

東南アジア、中国、ロシア……今、世界規模で砂漠化が進んでいます。日本人が海外から木を調達して家を建てることで、どれだけ地球環境を破壊しているかに、私たちは目を向けなければならないと思っています。

私は環境の破壊をくい止めるために天然林はそっとそのままに、北海道の人工林だけを使うという環境にやさしい家づくりを考案しました。北国の厳しい風土のなかで人が一生懸命に手をかけて育てた木は、品質的にもすばらしいものです。曲がりやねじれがあるとされた問題を解決する研究を行い、技術を開発し、産地とネットワークを結んだ新しい住宅供給システムを確立することができました。

建築を通して人の人生に関わると同時に、どうやったら本物の、質のいい住宅をつくれるかを模索してきたのは、そのことが必ずお客様のためになるという信念を持っていたからです。『人を幸せにする人が幸せになる』。ホスピタリティの基本は、人の心を想う気持ちであり、お客様のためになるという信念だと思っています。

◾️「1%のアイデアと99%の努力ということを信じています」という石出氏は、道産人工林による家づくりを通じて、天然林の保護と建築資材の自給自足への取り組みをスタートさせた。石出氏の信念は、社会運動のような規模で広がり、林野庁第1回木材供給システム優良事業長官賞、北洋インベストメントノースパシフィックアントレプレナー大嘗など多数の受賞となった。ソシオダイナミクス・ペンチャー(事業の創造を通じて深刻な社会的問題の解決に挑戦するとともに、収益性の実現も同時に意図する企業)として評価が高い。建築雑誌リプランにて「石出和博のハウスドクター診察室」連載中。箸書『こころ紀行』
お問い合わせ/011-615-7777

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