北海道新聞 消費者志向優良企業 経済産業大臣表彰
受賞記念インタピュー
森を建てよう。そのほんとうの意味。

2006年3月、経済産業省が主催する「消費者志向優良企業表彰制度」において、HOPは北海道初の経済産業大臣表彰(啓発・教育分野)を受賞しました。
これは、消費者志向菫視の企業姿勢、品質の管理と保証体制、環境保全への取り組みなどにおいて、HOPは極めて優良であると判断されたものです。受賞を記念して、北海道新聞社によるHOP代表・石出和博へのインタビューが行われました。
その内容をご紹介いたします。

家を建てることは、その人の人生を建てること

田村 消費者志向優良企業・経済産業大臣表彰受賞、おめでとうございます。この制度は1990年度に始まり、これまでに日本を代表する企業が受賞してきていますが、北海道の企業が初受賞したことの意義は大きいと思っています。
家づくりで消費者がまず頭を悩ますのは、「いったいどんな住宅を建てればいいのか」ということだと思います。消費者志向という観点から、HOPの考えをお聞かせください。

石出 家を建てることは、生きていく場、その人の人生を建てることだと思っています。
建築とは何だろう、何のために建築するのだろうと自分自身に問い掛けたとき、「建築する場は、その人の人生観を形にすること」という思いにたどりつきました。

建築家はお客さまの人生観を建てるのだとすれば、私たち自身が豊な人生観を持っていなければならないですし、そのことをお客さまに伝えることが大切だという気がしています。自分が家を建てたいと思うときに、何の人生観も持っていない、自分よりも美意識が足りない人間に家づくりを頼もうとは思いませんよね。

家づくりは、人生のうちで最も大きな、そして楽しい遊びをすることなのだと思います。大半の方は、その遊びを放棄して、買い物でもするような気持ちでインスタントな住まいを買ってしまいますが、家は商品ではありません。家は「買う」ものではなく、「つくる」ものだと思うのです。

田村 消費者にとっての良い家、満足できる家とは何なのでしょう。どんな家だとイメージすればいいでしょう。

石出 建築は結果が一つではありません。いろいろな形があっていい、いろんな使い方があっていい。居心地がいい、ここが楽しいと思える家をイメージするのがよいと思います。家を建てられたお客さまから、「自宅に知人を招いてパーティーをしました」というお話をよく聞くのですが、そんなときは「ああ、満足していただけたんだな」と感じます。自分の家に満足しているからうれしい気持ちになれる。人をお招きしたいと思えるのだと思います。

相手を思う心こそが消費者の満足をつくる

田村 満足していただける家をつくるということは、住宅を設計する側には、消費者の気持ちですとか、ライフスタイルといったものを理解する力が必要になります。

石出 家づくりには想像力が必要です。プランニングをしている段階での百パーセントは、実際に住んだときのお客さまの百パーセントの満足にはなりません。なぜなら、お客さまの心や関心が、住み始めるまでの間に進化し、高まっていくからです。

家づくりをご提案するときは、お客さまの、その先にある満足を見通す想像力が必要です。相手が進化、変化していくことを見越して、そのギャップを埋める努力をしなければなりません。そこを埋めるのが相手を思う心、相手の気持ちをイメージする想像力だと思います。

田村 デザイン力については、どのようにお考えですか。

石出 私は22年ほど前にアトリエアムという一級建築士事務所を開設し、その後、アトリエアムの施工を主に担ってきた藤田工務店を吸収して、10年前に両社を統括するHOPを設立しました。

設計と施工が分離していると、トラブルが生じたとき、「施工は設計通りやった」「設計はそうじゃない」とい争いになってしまいます。そんな責任のなすりつけで、どうやってお客さまの家を守れるでしょうか。設計施工が一体であることは、デザインに満足してもらう、施工に満足してもらう、耐久性も保証するということです。そうすれば、はるかに高いレベルの住宅ができます。

デザイン力は、技術の裏付けがあって初めて本領を発揮することができるのです。

間伐材で家を建てると森がよみがえる

田村 家づくりにお使いになっている木材は、50年サイクルで伐採される道産材と聞いています。人工林とはいえ、木を切り倒すのは環境破壊であると誤解する人が多いようです。

石出 私たちが使っているのは、森の木が成長しやすい環境になるように間引かれた、樹齢40年〜50年の間伐材です。「間伐材」と聞くと、質の悪い木のように息う方がいらっしゃいますが、間伐はあくまで森を守るための作業の一つであって、質が悪いのではありません。良質な樹木がたくさんあります。

日本の住宅に使われている木材の8割は輸入材だということをご存じでしょうか。日本が安く手に入れている輸人材は、貴重な熱帯雨林や北洋林を伐採したものです。日本人が海外から木を調達して家を建てることで、どれだけ生態系を壊しているのかに、私たちは目を向けなければなりません。
日本は立派な森林国です。特に北海道には、戦前、戦後を通して植えられたトドマツ、カラマツなどの人工林が豊富にあるのです。

田村 なぜこれまで、人工林は住宅材として多くの人に利用されなかったのでしょうか。

石出 間伐材を住宅材にふさわしい木材に加工する技術がなかったからです。人工林は成長が早いため、天然林に比べると年輪が広く、強度に問題があるとされてきました。住宅には強固な天然木が良いという風潮が、人工林の利用を妨げてきたのです。

私たちは、曲がりやねじれがあるとされた間伐材の問題を解決する研究を行い、北海道林産試験場とともに新しい乾燥技術を開発しました。接合金物を使って強度を高める新しい工法も開発しました。この工法によって、建てた住宅を50年以上経って建て替えするとき、使った木材をバラバラに解体することもできるようになりました。7割ほどの木材は再利用することができます。

田村 間伐材の利用はコスト面から見るとどうなのでしょうか?
石出間伐材を使うというのは安いからではありません。私どもは、林野庁との間で、国有林から出る間伐材を相場の価格で買うという協定を結んでいます。価格だけでいえば、輸入材より高い。けれども、北海道の木材利用率を上げるためにも、森林の荒廃に歯止めをかけるためにも、徹底した間伐材の利用が必要だと思っています

いいものを提供してこそ理念は伝わる。

田村 環境保全も含めた家づくりの理念を、消費者はどのように受け止めておられるのでしょう。

石出 お客さまから言われることがあるのですが、「森を建てよう」という会社から何をやっているのかと思ったら、デザインのいい家を建てているじゃないか」。そうした興味を持ったお客さまが私たちの会社に来てくださいます。それで間伐材を生かしているというお話をしますと、皆さん、理念を共有してくださいます。

私たちが毎年実施している植林も一万本を超えました。建主さんを中心に、たくさんの方が参加してくださっています。

私は、芦別に生まれましたので、やはり地場の木をもっと生かしたいという思いもあります。木には価格の安い木、高い木がありますが、それは人間が作り上げた商品の価格であって、木にはそれぞれに良さがあります。建材としては誰も見向きもしないシラカバやポプラだって、とても美しい肌です。本物の索材をうまく生かせば、美しい、品格のある家をつくることができます。
私は日本の伝統に学びつつ、自然と調和した、北悔道のスタンダードな住宅づくりを目指しています。住む人が幸せになる良い住宅を提供してこそ、それが実現できるのだと思っています。


消費者志向有優良企業表彰制度において表彰された理由

経済産業省が実施している「消費者志向優良企業表彰制度」は、いくつかの部門ことに表彰される制度である「啓発・教育分野」はHOPが全国初めての受賞となっている。主な受賞理由は次の通り。

■植樹から始まる木材のライフサイクルから、住宅及び住まい手のライフサイクルに至るまでを含めた全体システムの提案を経営方針としており、その精神のもと顧客対応、住宅文化の提案行っている。

■社長自らが雑誌やラジオを通じて実施する「ハウスドクタ—活動」(消者を対象とした住まいに関する相談·診断活動)や、札幌をべ—スに横浜、京都でも開催している「住まい塾」(文としての住宅、環境共生住宅等に関する消費者啓発)同社の顧客以外の消費者にも広く住まい方に関する相談・啓発活動を実施している。

■森林保全の推進のため、平成14年より地域住民とともに植樹活動を行っており、平成16年にはNPO法人「森をたてようネットワ—ク」を設立。全国のNPO法人のネットワーク化を図り、森林の育成・保全、地域住民の意識啓発に努めている。

聞き手
北海道新聞社広告局次長
田村 雄司

北海道新聞(2006年4月20日)に掲載されたインタビュー記事の内容を掲載しています。


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