リプラン 雑誌掲載 家づりは人生最大の遊び

「家づくりは人生最大の遊び」
私は、以前からそう言い続けています。
「何をふざけたことを言っているんだ」と思う人もいるかもしれません。
しかし、戯れ言でも間違いでもありません。言い換えれば、家づくりは人生そのものであり、その人が生きていく上での集大成が家なのです。つまり、家をつるということは、自分の人生観を形にしているということでもあります。家づくりはそれくらい真剣勝負だと考えているのです。

にもかかわらず、現代人は家づくりをおろそかにし、与えられたものをそのまま受け入れている場合が多い。システム化された家を見せられて、「この中から選んでください」といわれて、いくつかの選択肢の中から決めてしまう。これでは、人生の集大成とは言えないのでしょうか。

キャンペーン・新聞広告 2000年〜

家づくりでまず重要なのが材料です。私は北海道産の木材を使って家をつくってきました。少なくとも日本で作る家は、日本で育った木で建てた家がいいのです。

北海道がかつて炭坑で栄えた頃、炭坑の坑木用にと、信州からカラマツが大量に植林されました。しかし、炭坑業が斜陽になって、その需要は失われていきます。カラマツは曲がりやすく、建材には適さない。使い道がなくなったカラマツの人工林は放置され、森は荒れ果てていきました。私の芦別の実家でもカラマツを植えていましたが、後に木が育っても1本も使われていなかった。これをなんとか使ってやろうと思い立ったのです。

実は、この仕事を始めた頃は、特に北海道産材を使おうとは考えていませんでした。道産材の良さに気付かされたのは、名古屋の材木問屋と話をした時です。「芦別のナラが欲しい」と言われて、はっとしました。日本のナラは海外では高値で売られていて、ヨーロッパでも高級家具に使われている。だったら、森林資源が豊富な北海道には大きなチャンスがある、と思ったのです。

家は商品てはありません。車を買うのと同じょうに家を買ってしまうという風潮が日本の家造りをダメにしてしまいました。

商品化された住宅は伝統的な素材や手法や熟練した職人を必要としなくなり、大量消費社会の中で捨て去られてきたのてす。その結果日本中に薄っぺらい町並みを生み続けてきました。

いま、この時代に本物の家造りを取り戻すためには、デザインの力と職人の力と自然素材の力を改めて見直し本来の姿を取り戻すこと。

上質な空間とは、自分だけの趣味の空間から醸し出す質感のバランスと、人が心地よいと感じる空気感をいうのではないてしょうか。

住まいとは、その人が持つ審美眼、人生観そのものの表現の場なのてす。人生観や生き様までを空間に込めることができる、家造りの環境を今こそ育てることが必要てす。

昨年、ニセコに外国人住宅を3棟建てました。一人はイギリスの人、一人はカナダの人、一人は香港の人です。

みなさん審美眼が非常に高く、自分だけの生き方をしっかり持っていて、住まいに対する遊び心にしっかりとした定見を持っていて私もわくわくしました。「家づくりは人生最大の遊び」と言い続けてきた私は心から合点がいきました。

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