高台寺鬼瓦席にて (左)石出和博氏 (右)清水六兵衛氏

茶道誌「没交」特別対談 物と空間が語る時代
《対談》 陶芸家 水六平衛 × 建築家 石出和博

江戸時代、優れた陶工が数多現れ、京焼は興隆します。初代清水六兵衛もその一人。
八代目の現当主は器だけでなくオブジェなどの作品も手掛ける造形作家です。
「森を建てよう」を合い言葉に森を育てながら茶室や住宅などを造り続ける建築家の石出和博氏が時代精神と物づくりについて六兵衛氏と語ります。

質感のバランスと、間の芸術

石出 今日は清水六兵衛先生と江戸期の京焼と茶室についてお話をするというので、楽しみにしておりました。ここ高台寺の「鬼瓦席」は灰屋紹益の好みだといいますから、江戸前期のものですが、とても簡素な木を使っていますね。今なら間伐材といったところでしょうか。ありふれた木を適所に使い、しかも細い。それなのに凄い空間だと思いますね。

清水 座った時の窓や天井の高さ、壁や柱などの質感、そして茶室に収まる道具の形や寸法に加え、茶の湯では道具が置かれる位置まで規矩がありますが、ああ、やっぱりここでないといけないと思いますね。それは、土や木、紙といった自然素材の質感とその寸法を含めた形が織りなす物と物の間や人と人の距離感がいいのですね。茶室はたいていシンメトリーでなく、どこかちょっと崩れています。茶碗もまた、ちょっと歪んでいます。そのアンバランスに我々日本人が安心できる間や美しいと感じる何かがあるのだと思います。「質感のバランス」ということをよく父が言っておりましたが、それが日本人の美意識の根底に流れるものかもしれません。

石出 清水先生は土という素材で器やオブジェをお作りになっていますが、やはり空間の構成要素としての茶碗やオブジェであると?

清水 もちろんそうです。建築空間の中で作品をどう美しく見せるか。あるいは建築そのものを美しく見せるためにどんな作品であるべきかと、空間全体を考えて創作します。ですから、茶室は質感と間で構成される芸術作品なのですね。

石出 であればこそ、もてなしの舞台としての演出ができ、人と人がきわめて精神的な交流ができるということですね。茶室を造る者としてやり甲斐を感じると共に大きな責任を感じます。

時代の気分と精神をこめて

清水 今日は席に合わせて初代の作品を持参しました。茶碗は妙法院御庭焼の黒楽。妙法院の宮から頂戴した六目の印が押されています。初代は黒楽と赤楽にだけこの印を使っています。御手本の水指は円山応挙の絵付という伝ですが、本当はよく分かりません(笑)。糸瓜香合は松村呉春の絵。そんな人たちが妙法院のサロンに出入りしていたことが伝わってきますね。

石出 初代は伊羅保などの復古と同時に独自の創造も凝らした匠であったと伺っています。清水家の作風というのは?

清水 うちは先代と同じことをするなという家風があって作風は継ぎません。各代の創意をつなぐのが六兵衛窯の伝統と言えば伝統です。しかし、一見バラバラでも代々の作品からその時代の気分が伝わってきます。

石出 建築も同じです。この茶室も屋根瓦が掛けてあって意表を突きますが、何か思いとか精神がこめられたはず。私は茶室の設計などしていると、どこへ行っても寸法ばかり気にして、すぐにスケールで計ってしまいます。でも実は計っているばかりでは全体のバランスを見落としている。目で見て心で計るようにならないと本当の数寄屋や茶室建築などできないと気づくのに何十年もかかりました。材料はこうあるべきだとか、お金をたくさんかけたとかいうことではなく、基本を押さえた上で、それを使う人間の物語を創り出す。そういう精神を建築にこめたいと思っています。

清水 精神と形や寸法、素材の質感も含めた意匠が時代に適っていることも必要ですね。それをこめることで器も建築も文化としてつながれるのですから。

清水 六兵衛 (写真左)

1954年生まれ。1979年早稲田大学工学部建築学科卒業。1983年朝日陶芸展グランプリ、1993年京都府文化賞奨励等受賞。2000年八代清水六兵衛襲名。建築空間における陶の造形作品を多数発表。京都造形芸術大学教授。

石出 和博 (写真右)

1946年生まれ。気鋭の建築家集団アトリエアムを率い、全国で作品を発表。1997年グッドデザイン北海道受賞。2001年林野庁長官賞受賞。2006年経済産業大臣賞受賞。一級建築士事務所アトリエアム(株)代表取締役社長。HOPグループ代表取締役CEO。

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