北海道新聞 もっと北海道「第一回 トップの発想」 道産材に活路。
旧態とした住宅供給システムに革命

道産間伐材を使った独自のHOPシステム

水野 この度はJVA※1環境特別賞受賞おめでとうございます。評価された点を教えてください。

石出 ありがとうございます。住宅産業におけるベンチャー、しかも環境賞での受賞は珍しいといわれています。私たちが北海道の間伐材にこだわり、特許技術を開発することで木の特性を生かした家造りを15年間こつこつと継続してきた活動の意義を認めていただいたのだと感謝しております。

水野 その特許技術を含めた、独自の住宅供給システムとはどのようなものなのですか。

石出 「HOPシステム」というのですが、これは木を育てる人、伐採や製材に携わる人、そして家を建てる建築業の人が協業することで、木材の産地直送と流通コストの大幅な削減を実現したものです。つまり、原木の確保から流通、設計、建築までを自社で一貫し、従来の住宅建築のあり方を根本から見直した新しいシステムです。

水野 木材の産地直送ということですが、道産材にこだわっているということですね。

石出 これは第一に「地元の森林を活用することで、森が再生し、守られる」という思いがあるからです。間伐材は人工林。天然林とは異なり、定期的に間引きすることで生育します。広大な森林面積を誇る北海道にはカラマツなどの人工林間伐材が豊富ですが、当時は人工林を活用したくても技術的・流通的な障害が多々ありました。

そのうえ流通の主力は輸入木材。近年は中国の旺盛な建設需要の影響で世界的にも木材価格が高騰しており、今こそ道産の間伐材を出番だと思ったのです。間伐材なら森を保護しながら、木の特性を生かした高品質住宅の建築が両立できるのです。  

曲がる、割れる。逆転の発想で特許取得

水野 特許を取得された技術についてお聞かせいただけますか。

石出 例えば北海道に多いカラマツは、曲がる、割れるなどの理由で利用されていませんでした。シラカバに至っては建材としては見向きもされません。そこで、「曲がらないようにすれば使えるのではないか」と発想を転換したのです。

道立林産試験場と共同で木の乾燥技術の開発に成功し、そこから道が開けました。木材の産地直送を目指し、道内に木材乾燥工場を設立、間伐材の特性を生かした部材の開発や規格化を試みたのです。

特許を取得した「4面スリット工法」や実用新案登録をした「継手金物」など、独自の技術を組み合わせることで、部材調達だけでなく工法技術の向上やリサイクル方法までを追求しました。

水野 いろいろとご苦労も多かったと思いますが。

石出 北海道は豊かな森林に恵まれ、ベニヤや、つまようじ、割りばしを造る工場などが多く、扱う木材も違います。

しかし製品が売れないと、どの工場も粉砕し、安価なチップ材にしていたんですね。私はそれを身近に見ていたものですから、工場を一軒ずつ訪ねて廃棄物同然だった木材を集めて板に替え、建築資材として使えるものにしようと説得しました。

現在は北海道に多いカラマツやトドマツ、タモやシナなど、多種を扱えるようになりました。

水野 家造りに個性の幅が出ますね。

石出 そうなんです。家とは住む人の価値観や人生観を映し出す空間だと私は考えております。効率や低価格だけを追求した画一的な住宅では、多様なお客様の価値観を表現できないと思うのです。         

足元の財産に目を向け、可能性を追求する

水野 今回はモデルハウスにお邪魔しておりますが、この茶室は心が洗われる空間ですね。

石出 ありがとうございます。これは一畳半という大きさで、千利休の孫である宗旦が完成させた侘び茶の究極の姿です。今日庵など今に残る文化的茶室と同じ大きさを紙とヒゴで造ったものです。

水野 日本の伝統を、現代の住まいに生かしているのですね。

石出 私の会社は茶室を多く造っております。コストダウンのため材料を安くするためにプラスチックなどを多用した無機質な家は造りたくないのです。私たちは五感に心地良く、肌になじむような家造りを目指しています。そのためには本物の木が持つ質感は重要なファクター。森林資源を守りながら道産材にこだわる理由もその点にあるのです。

水野 HOPグループの住宅は道内のみならず道外のお客様も多いと聞きました。

石出 家造りは、お客様に満足していただけることが第一。お客様のライフスタイルとご要望をきめ細かくお伺いし、幸せの後押しができる家造りを心掛けております。満足いただけるご提案ができると、口コミでお客様がお客様を呼んでいただけるのです。とても有り難いことです。京都の他に横浜にも支社があり、お客様も多くいらっしゃいます。

最近ではニセコや軽井沢の外国のお客様からのご注文で、長期滞在型のコンドミニアムなども手掛けております。本物の素材を使い、茶室など日本の伝統を重んじた造りは、外国人のお客様にとても喜ばれています。

(※1)Japan Venture Awardsの略。起業家精神に富む経営者や地域社会・経済に貢献をした経営者を表彰する。
(※2)2003年国内初の森林認証制度としてスタート。「持続可能な経営を行う森林から生産された木材」認証する制度。

聞き手
水野 悠希 Yuki Mizuno (写真左)

北海道文化放送アナウンサー。東川町生まれ。『のりゆきのトークDE北海道』キャスター、『ゆうゆう金曜日』出演中。ニュース、情報・バラエティ番組など幅広く経験。東川町観光大使。

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