異なる個性が生み出したデザイン

釧路市 I邸

感性でものごとを捉える芸術家肌。温かみのあるテイストを好まれ、〝シャビーシック〟に興味を持たれていた奥さま。機能美を好まれ、3台のクルマをメンテナンスすることを何よりの楽しみとされているご主人。異なる個性をもつお二人が、ともに心からくつろげる空間づくりということが、設計のテーマとなった。
外観は、黒を基調とした外壁にシンプルな片流れ屋根のシルエット。石積みのアプローチとシンボルツリーが、センスあるアクセントとなっている。室内に足を踏み入れると強い印象を与えるのが、開放感に満ちたリビング。中庭に向いた高さ3.5メートルのガラス窓から、陽光がたっぷりと降り注ぐ。吹き抜けの天井から吊り下げた照明、まるで浮いているように軽やかに設えられたアイアン製の階段手すり、トップライトを設けた離れ感覚の和室が、パブリックな空間に豊かさを与えている。
一方、ダイニングやキッチン、ロフト風に仕上げた寝室、ウォークインクローゼットなどプライベート・エリアには、使い込まれたようなテイストの家具や装飾品などと、エレガントな素材を融合させるシャビーシックのスタイルを効果的に採用。ナチュラルな風合いと落ち着いた色調の家具をはじめ、照明器具、レースのカーテンやベッドのリネン、雑貨に至るまで素材を吟味した。入り口をピンクで縁取ったウォークインクローゼットは、ひときわ印象的。ともに歩んでいく人生を思い描きながらも、異なるスタイルへのこだわりを諦めることなく、むしろ触発することで生まれた鮮明なデザインがこの家の真価だ。