和魂洋才を形にした都会の中の家

東京都 O邸

海外生活の長いオーナー夫婦が終の住処に求めたものは、完全洋式ではなく、洋の中に日本古来の素材や技術を駆使した家で生活したいという思いだった。海外生活が長いがゆえに、昔のままの日本家屋に対する憧れを強く抱かれていたのだ。今回は和の精神性を主軸とした、和魂洋才の考え方で全体の設計を進めることになった。
モダンなリビングダイニングは天井を日本建築でいう格天井にして、木組みの美しさを見せている。床と天井に用いた天然木の色は濃く、重厚感を醸し出しているが、照明をその中に組み込み、天井高を活かした開放感あふれる大空間を作り上げた。
逆に完全に独立した形で、日本建築そのものを楽しむ離れ。母屋の玄関アプローチから離れに続く露地は、石と苔、そして木の配置を計算し、まるで市中山居の味わいを感じさせるように工夫してある。露地の手前にある、道路から5mの高台を上る階段アプローチは、離れとのバランスを考え印象の柔らかい琉球石を使用。今は日本全国でも珍しくなりつつある銅板葺の屋根をはじめ、長い庇や縁側など、伝統的な日本家屋としての特徴を備えた造りに、内部には雪見障子や床の間など日本の美意識に直結するものをしつらえた。外光をふんだんに取りいれる西洋的デザイン要素が強い母屋に対し、離れは光の入り方をコントロールして影を創り、古くからの東洋思想、陰陽五行の考え方を反映している。