緑と触れ合いながら暮らす家

札幌市 S邸

閑静な住宅街の一画。建築前の敷地は広大な庭地であったため、風格のある樹木が数多く植えられていた。木工や庭いじりが趣味というオーナー様のご希望で、もともとそこにあった樹木や庭石を最大限活かしたプランを設計した。開放感あふれる吹抜けリビングの外側には、同じ床の高さのデッキを庭に向かって設け、開口部の特注木製サッシの引き戸を開ければ、内と外との区切りのない大空間が出現する。さらに2階にもバルコニーを設け、庭木の葉が四季折々に表情を変えるのを間近に楽しむことができるようにした。デッキとバルコニーの床材には国産のクリを用い、本物の素材の優しさと耐久性とを両立させた。天井にセンやシナ、柱や梁にはタモなど内装に無垢の木材をふんだんに使いながらも、床に張ったタモ材の継ぎ目を揃え、すっきりとした印象を与えるよう工夫した。浴室にはご主人がかつてお住まいになっていた青森ゆかりの十和田石や青森ヒバをふんだんに用い、しっとりと懐かしい風情の空間とした。建築のために移動させざるを得なかった庭木は、可能な限り再び庭に戻した。ずっと以前からそこに建っていたかのように樹木に囲まれ、穏やかな風格を持った家となった。