囲炉裏のある家

札幌市 I邸

框の前に、存在感のある沓脱石(くつぬぎいし)が置かれた玄関。ここから奥の客間まで、梁が連なる高い吹き抜けを持つ土間が続く。由緒ある旅館のような風情と、京都の町家を思わせる佇まい。その空間を構成するのは、伝統的な日本の民家でみられる黒光りする柱と白い塗り壁が鮮やかなコントラストをみせる、正統の和のテイストだ。大きな開口部から見渡せる広々とした庭では愛犬たちが遊び、和の緊張感をほどよく解きほぐしてくれる。

寛ぎのプライベート空間であるリビングには畳が敷き込まれ、本格的な炭火を楽しめる囲炉裏を配置。どこか懐かしい、炉端の雰囲気が心を癒してくれる。一方、リビングの奥にあるパブリックな客間は、高級感を漂わせつつも遊び心を感じさせる床の間をデザイン。
1階の雰囲気とは対照的に、2階の最も見晴らしのよい位置にはバーコーナーが設けられ、街の夜景を眺めながら、心ゆくまで美酒に酔うことができる。気持ちを広々とさせてくれる眺望を得るため、建築前に足場を設置して2階に当たる高さからの見晴らしを確認するほど、こだわった空間だ。

一方、地下には広々とした造作の風呂を設けた。芳しいヒバの香りに囲まれ、信楽焼の浴槽で寛ぐひと時は、高級旅館でも味わえない極上の贅沢をもたらしてくれる。
外観はスタイリッシュな片流れ屋根をもつ洋風の仕様。日本の伝統の上に立脚しつつも、現代的な感覚を取り入れた邸宅だ。