都心の閑静な住宅街という好立地ながら、前面道路から狭い通路部分を通して20メートル近く奥に入った旗竿地。建築法規上の条件が厳しいこの敷地に対して、オーナーの思いを汲みながら計画されたのが中庭を囲む形状だった。
キンモクセイ科の常緑樹・シマトネリコをシンボルツリーに据えた中庭に向けて大きな開口がとられ、どこにいてもその窓越しに家族のようすを感じることができるとともに、明るい陽の光と四季の移ろいを感じさせてくれる。
中庭を正面に望む玄関アプローチの壁をはじめ、最上階にあるリビングのテレビ台、洗面台の天板など、特別に誂えた石材を各所に配置することで、本物の素材ならではの豊かな表情が感じられるデザインが施されていることも、この住まいの特徴。さらに、各居室は、ひと部屋、ひと部屋、その用途やイメージに合わせて異なるデザインで造作。トイレなどのスペースを含め、細部にまで徹底したこだわりが表現されている。
中庭やテラスに向けて大きく開きながら、要所要所はオーナーの趣味でもある植栽でさりげなく目隠しを施すなど、プライバシーはしっかり確保し、同時に圧迫感や閉塞感を感じないつくりとすることで、安らかで、おおらかな家族の時間を演出する住まいとなっている。