素敵な夜のひと時。限られた時間だからこそあふれる、互いを愛おしむ気持ち。「夜空のむこう」をキーワードに、この家の計画は始まった。プランの軸となるのは、建物の中心をカーブさせてつくった大開口。中庭に面したこのスペースは、床から天井まで抜ける円形広場となり、住まいのどこからでも夜空を見上げることができる。内部は奥さまが憧れた吹き抜けが頭上高く広がり、開放感にあふれる。吹き抜けの中央には橋が架け渡され、そこにたたずめば、夜空の星たちがすぐ間近に見える。バスルームも星にこだわった。ドーム状にくり抜いた天井にファイバーを組み込み、リゾートを思わせる浴槽から見上げれば、星座の動きまで鑑賞できるプラネタリウムを設えた。室内は道産材や珪藻土など自然素材を使うとともに、和のエッセンスを随所に採用。なつかしい趣のちゃぶ台や箪笥など、ご夫婦の愛用品に合わせてダイニングは畳敷きに、主寝室も床の間を備えた8帖の和室とした。この家には、空間を仕切る扉がほとんどない。それは、どこにいても星と月を眺められるようにという配慮だが、いつでも気配を感じていたいという、家族の仲のよさが反映されて生まれたプランだ。