森林に囲まれた、1200坪を超える敷地の一角に建つ、香港で事業を行うイギリス人オーナーの別荘である。リビング、寝室をはじめ、どの居室からも端正な姿の羊蹄山を望むことができる。日本的な素材や空間構成に憧れを抱いていたオーナーは、このニセコの大自然の中に、純和風の設えを求めた。とはいえ、外国人が持つスケール感は、和風のモジュールとは相容れない部分も少なくない。そこで、天井高が2.6m〜5mにもなる空間のなかで、柱や梁のサイズを大きくしたり、外観も破風を長く出すことでバランスを取り、違和感を回避。和の空間を熟知しているからこそできる技だ。吹き抜けの大空間を構成するリビングには、札幌・石山産の軟石による暖炉を設け、温かな炎ごしに羊蹄山を眺められる仕掛け。そして圧巻は、リビングの真向かいにあるジャグジー。ニセコでは最大、国内でもトップクラスの大きさを持つアメリカ製で、冬でも入浴が楽しめる。その向こうに広がる平原はすべて農地のため、建物がつくられることはない。この絶景を、ずっと独占できることも、かけがえのない価値だ。