大自然と人を結ぶ無垢な空間

美幌町 H邸

美幌峠に続く美しい丘にこの建物がある。

美幌市内から30分ほど、美幌峠に抜ける国道沿いに面し、遠くに雄阿寒岳が見える。道東のこの地方はビートや大豆、トウモロコシ畑がどこまでも続く、あたかもヨーロッパの風景のような美しい丘陵地帯である。

この地に建築を決意した東京出身のオーナーは、限りなく自然の中で住みたいという希望があった。

オーナーと建築地探しに1年の歳月をかけたが、2月のある日、一面銀色に輝く雪景色の中で、この景色とこの敷地に出遭った。

この場所は以前、畑作農家が暮らしていたということを後で知ったが、限りなく荒涼として続く白一面の雪景色の中で唯一人間の挑んだ温かみを感じたのはそのためだとわかったのだ。

もちろん水道も下水もない荒野、その中でどう暮らすか。生きるということを真剣に考えていなければ、この地で、という発想にはならない。

現役の内科医であるオーナーは、ここしかないという直感でこの場所を決めたのである。厳しい冬の北海道を知り尽くしているからこそ、躊躇しなかったというと嘘になる。この場所での生活をより快適な場に仕上げるためには覚悟のいる仕事であった。