ボリューム感のある空間を確保しながら、素材の質感を際立たせることで温かみを与え、心地よく、かつ飽きのこない住まいとすることをテーマに構成した邸宅。このテーマを象徴するのが、天井高を最大限、確保した大きな空間のリビングの構成だ。硬質な床タイルの表情と、壁・天井に用いた木の暖色のコントラストが、くつろぎの時間をもたらしてくれる。高い位置にあるハイサイドライトからの陽光が時刻とともに移ろい、空間の表情を変えていく。隣接するダイニングは、リビングと同様の構成としつつ、天井の高さを変えることで静かな語らいの場を演出。リビングにはガス暖炉を設置したインナーテラス、ダイニングには薪暖炉を備えたテラスを設け、冬の時期にも、自然の風情を愉しめるようになっている。オーナーの趣味に応える仕様として、ガレージの奥には第二のリビングとも呼べるスペースを確保。ガラス越しに愛車の機能美を愛でたり、同じ嗜好をもつゲストとのひと時を過ごせる場としている。伝統に則りつつ、現在の感覚でアレンジした和室も特別なひと時を過ごす空間。日常の喧騒から少しだけ離れ、静かに心を落ち着かせる別世界となっている。開放感にあふれる陽の空間から、厳かに過ごす陰の空間まで。日々の暮らしと、心の動きに合わせた居場所を内包する奥深さのある住まいとなっている。