日本古来の風水を大切にするオーナーの要望を満たしつつ、いかにモダンなデザインへと昇華させるかが、設計のテーマとなった。鬼門・裏鬼門に水回りを配置しない、四角い外構平面、東向きの大開口を設けるといった条件に沿いながらプランを検討。1階は広々としたエントランス空間と5台が駐車可能なガレージ空間のみとし、2階をメインの生活の場とした平家のような感覚の終の住処となった。風水では色彩も意味を持ち、なかでもオーナーが好むゴールドは富や繁栄の象徴として重要な色となっている。そこで、エントランスの自動ドアが開くと出迎えてくれる煌びやかなシャンデリアはゴールド、優美な曲線を描く螺旋階段の鉄骨部分はシャンパンゴールドのメタリック塗装で仕上げた。リビングでは、ソファ背面の壁には金雲母の左官材を用い、プライベートジムの壁にもアクセントとしてゴールドのタイルを使用するなど、空間のなかにゴールドが溶け込むよう、各所で工夫を凝らした。オーナーが好まれる蛇紋石も、そうした空間で効果的に使用。目を引くエントランスの両側や、リビング開口部の両サイドに挿入することで、邸宅全体で考慮された風水の要素を現代風に、かつスタイリッシュにまとめる役割を持たせている。オーナーのパーソナリティが住まいとしての特徴を醸し出す、まさに唯一無二の邸宅となった。