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心の別荘 原生林に囲まれた広大な敷地。その自然に溶け込むこと。開放感とともに、ゆったりと流れる家族の時間を過ごせること──。そんなオーナーの願い、そしてテーマを実現するためにモチーフとしたのは、20世紀のモダニズム建築を代表するミース・ファン・デル・ローエのファンズワース邸だった。地面から浮き上がったような床。床と並行に伸びる薄い屋根。そして床と屋根の高さ一杯にガラスをはめ込んだ、シンプルで軽いイメージの平屋建てという構想が浮かんだ。Less is more(より少ないことは、より豊かなこと)というミースの言葉どおり、存在感を抑えた構造体と、素通しになったかのような開口部が森の緑を映し込み、透過することによって、自然の豊かさと一体化する。全体のプランは、リビング、ダイニング、和室、寝室が一直線に並び、つながる構成とした。これもミースが唱えた、内部空間を規定しないユニヴァーサル・スペースの思想を活かしたものだ。どこにいても家族の気配を感じながら、そのなかでそれぞれが自由に伸び伸びと暮らす。そして、どの場所からも外部の素晴らしい景観に触れられるようにした。集いの場であるリビングには円形の大きなソファが置かれ、空間のアクセントとなっている。これは家族との触れ合い、団らんのコア(核)としてオリジナルに造作されたものだ。自然との一体感のなかで、プライベートな時を心から楽しむ。ここは家族の住まいであり、心の別荘でもある。What is the Value of a Housechapter 1040原生林に溶け込む家House that assimilates into the primeval forest

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