HOP

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作品紹介

HOPの家には、そこに暮らす家族一人ひとりの物語があります


 


外観

 

 道東の景勝地として知られる阿寒国立公園。 このエリアに属する美幌峠は東に屈斜路湖、西に雄阿寒岳を望み、北海道らしい雄大な空間を呈している。  峠に続く見晴らしのいい丘の途上に、その建物はある。東京出身のオーナーが自然の中での暮らしを決意し、夢を描いた邸宅だ。  見渡す限りの緑と青。大自然のパノラマが、住空間を天然色に染め上げる。


木立を思わせるタモの柱が、リビングに続く


道東は美幌町の市街地から30分ほど、美幌峠に抜ける国道沿いのなだらかな丘陵地帯。ビートや大豆、トウモロコシの畑が延々と続き、その光景はあたかもヨーロッパの田園地帯を思わせる。遠くに見える雄阿寒岳の雄姿もすがすがしい。
 設計を手がけた社長の石出以下スタッフは、限りなく自然に近い場所で暮らしたいというオーナーの意向を受けて、それにふさわしい土地を探すのにおよそ1年の歳月を費やした。そんな2月のある日、一面の銀世界に包まれたこの地と遭遇した。気持ちが洗われるような雪景色は、一方で人間を拒むような荒涼とした自然を感じさせたが、それでもどこかに一抹の温もりを残していた。後で聞くところによると、以前は畑作農家が暮らした土地らしく、厳しい大地に挑んだかつての痕跡がそれとなく伝わったのかもしれない。
とはいえ、下水も通らない荒野であることに変わりなく、この地でどう生きるかといった強い信念がなければ、自然への憧れなど容赦なく吹き飛ばされてしまいそうな環境だった。


建物のプロポーションを整えるエントランス

 


曲線を配した階段ホール


それでも、オーナーの意志にブレはなく、「ここしかない」という直感めいた気持ちで、この場所を決めたという。社長の石出は、 「北海道の厳しい冬を知り尽くしている我々としては、躊躇しなかったといえば嘘になる。  ここでの暮らしを快適なものにするには、相当な覚悟で臨まなければという思いだった。」 と述懐する。
 大自然に違和感なく溶け込むような建築を実現するには、やはり自然に近い素材がいちばんだろう。まずはベースをコンクリート打ち放しと決め、さらにスケールを決定するため現地に何度も足を運んだ。その場に佇めば、どの方向を軸線に定めるか決めるのに、そう時間はかからなかったという。
 遠方にそびえる雄阿寒岳。オーナーがもっとも期待した書斎兼寝室は山が見晴らせる2階に置き、それを跳ね出すように設計。これでいくら雪が積もっても、遮るもののない特等席になった。ゆったりしつらえた玄関ホールの正面には、風景を切り取るように大きな窓が設けられている。緩やかな丘の斜面には北海道独特のカラマツの林が続き、美しい絵画となって飛び込んでくる。オーナーはこの構図を何よりも気に入ってくれたそうだ。

     面の左右いっぱいに窓を設けた書斎

 

そこから湾曲した階段がエレガントな導線を描いて2階へ続き、ナラやタモ、珪藻土といったやわらかな自然素材が、ホール全体をおおらかな

空気に仕上げている。リビングへ誘導する廊下には、4寸角のタモ材の柱が30本ほど連続して並び、林のようにも見える。居室の天井はシナ、

床はナラ、造作家具はタモというふうに、すべてムク材を使うことで、恵まれた自然環境のなかバランスのとれた存在感を発揮している。
水道が引かれていないこの土地で、井戸から汲み上げられる清冽な水は、裏山の向こうにある屈斜路湖から、地下水となって流れてくる

ものだ。都会では考えられないような天然のミネラルウォーターを独り占め。 ここで生きようと決意したオーナー家族に、天から授けられた

贈り物だろう。

 

 

埋め込み式浴槽の開放的なバスルーム


玄関ホールの大開口